1993年クリスマス ー 逸見政孝さん逝く ー

1993年12月25日は、僕にとって忘れられない悲しいクリスマスになりました。
この日はアナウンサーの逸見政孝さんが胃癌で亡くなった日でもあります。
衝撃の胃癌闘病宣言そして東京女子医科大学で入院治療。病院の外には多くの報道陣が集まっていました。
時々点滴を持って散歩している逸見さんを見て親しみを感じていたので、逸見さんの死はとても悲しいできごとですが、その裏側で、もう一つの小さな小さな女の子の死がありました。

その当時、僕には10ヶ月の乳児脳腫瘍の患者を受け持っていました。最初に診たのは生後4ヶ月のときで本当に可愛い女の子でした。しかし小さな彼女は悪性の脳腫瘍に冒されていました。小さな体は手術、放射線治療に耐え、一度は退院して元気でいました。しかし奇跡は起きませんでした。
6ヶ月後腫瘍が再発し、小さな体は確実に蝕まれていました。そして何という運命なのか、生まれて初めてのクリスマスに、お母さんに抱かれたまま逝ってしまいました。僕も、看護婦もみんなで泣きました。

霊安室から出て行く車に、逸見さんだと勘違いした報道陣が駆け寄ってきます。

空からはぱらぱらと粉雪が降ってきました。


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